こんにちは、夜ゼミ3年の志村です。3年生はつらい時期ですが、明るい気持ちを忘れずにいたいですね。私が最近面白かったのは、おそらく30代後半の工事現場にいそうなお兄さんが、コンビニでチュッパチャップスを土台ごと大人買いしていたことです。
さて、本題に入ります。今回は稗田三枝(2003)「会話の展開と談話標識:談話標識「でも」に焦点を当てて」,『日本語・日本文化研究』 pp.193-202. という論文を要約しました。この論文では、私の今後の課題となっている、「でも」の話題移行用法における話題の区切り・定義について詳しく述べられています。稗田は、これまでの話題移行の「でも」の研究は会話の全体構造を踏まえていないため不十分であると指摘し、会話の構造を捉えながら「でも」の機能の考察を試みています。
稗田はまず、話題の構造とその内容について説明しています。話題には大きな枠組みである上位の話題と、それに従属する下位の話題があります。上位の話題が「前売り券の購入について」だとすると、下位の話題には「映画館で購入が可能か」、「有効期限はいつまでか」、「何時から購入が可能か」などが挙げられます。そして、会話にはその場で最も話すことが要求される中心話題(本筋の話題)と、そうではない話題(逸れた話題)があるとしています。雑談や日常会話において、その場に最もふさわしい中心的な話題があり、会話参加者が中心的話題に沿った話題を選択することで会話が展開されています。
次に、実際の会話文の使用例を分析し、話題移行の「でも」を以下の2つに分類しています。
(1)下位の話題、上位の話題の導入に現れ、本筋の話題を始めるもの。
(2)下位の話題、上位の話題の最後に現れ、本筋の話題を終わらせるもの。
(1)は逸れた話題から本筋の話題へ戻るときに用いられます。例文にバラエティ番組での会話が挙げられています。ここではお笑い芸人の東野・今田がホスト、お笑いコンビのココリコ(遠藤・田中)がゲストの立場なので、ココリコについての話題が本筋の話題、その他の話題が逸れた話題ということになります(以下、下線部が本筋の話題、【】内が上位、[]内が下位の話題)。会話は【俳優としての活動について→[①ドラマでのココリコの演技について]→[②ドラマでの東野の失敗について]→[③ココリコ田中が出演した映画について]→[④今田のドラマ出演について]→[⑤ココリコ田中か出演するドラマについて]】という流れで進んでいき、逸れた話題から本筋の話題へ戻る場面である③と⑤の導入部分に(1)の「でも」が見られます。
(2)は逸れた話題から本筋の話題へ戻り、その本筋の話題を締めくくるために用います。例文にトーク番組でのインターネットの書き込みを見ながらの会話が挙げられています。ここでは次のゲストに誰を呼ぶかが本筋の話題となっています。会話は【①ゲストに田中を呼ぶのはどうか→[②書き込みの内容について]】→【③ゲストに北川を呼ぶのはどうか】という流れて進んでいき、逸れた話題の②の終わりの部分に(2)の「でも」が現れ、①の話題を終わらせ③の新しい本筋の話題を始めています。
この論文の問題点としては、本筋の話題が確立されていることが前提であること、そして上位の話題と下位の話題、本筋の話題と逸れた話題の定義がはっきりしていないことという2点が挙げられます。トーク番組などでは中心の話題がはっきりしているものがほとんどですが、日常会話などでは目的のない会話も多く、これと言った本筋の話題を見出すことができないこともあります。私が前回の研究で分類した展開用法の例文には、本筋の話題を見出すのが難しいものが多く見られました。また、何を上位の話題・本筋の話題と位置づけるかによって構造の捉え方が変わる場合もあるので、まずはこれらの定義を明確にする必要があると感じました。
以上のような問題点があるとはいえ、話題の区切り・定義の観点から「でも」の機能の分類を試みた研究は、分類の考え方の参考になりました。特に話題移行の回帰用法・転換用法では上位・下位、本筋の話題と逸れた話題をいう考え方を応用できそうだと感じました。今後も本筋の話題と逸れた話題という考え方の妥当性も検討しながら、引き続き話題の区切り・定義の考察を進めたいと思います。
参考文献
稗田三枝(2003)「会話の展開と談話標識:談話標識「でも」に焦点を当てて」,『日本語・日本文化研究』 pp.193-202.